86日目:田植えって面白い(愛知県刈谷市→静岡県湖西市)
 刈谷市から1号線を通って豊橋市に向かう。東海道をリキシャで走り抜けるわけだ。
 今日もほとんど休みなくペダルを漕ぎ続けた。休憩を取った方が余計疲れるような気がするのである。運動生理学的にどうなのかは知らないが、短い休みを入れると筋肉が硬くなるようで、再出発したときにだるさが増してしまうのだ。息が上がらない程度でずっと漕いでいる方が、長距離リキシャ走には向いているようだ。

 岡崎市から豊川市は外国人の姿が目立った。トヨタ系の部品工場が多く、日系ブラジル人や中国人、タイ人などがそこで働いている。バングラデシュで出会った「日本帰り」の元出稼ぎ人たちも、住んでいた場所として名古屋とその周辺都市の名前を挙げることが多かった。
 しかし地元の人によれば、外国人労働者の数は一時期よりはずいぶん減ったという。リーマンショック以後トヨタをはじめとする自動車メーカーは一気に赤字に転落し、大量の派遣社員の契約を打ち切ったのは記憶に新しいが、「派遣切り」にあったのは日本の若者ばかりでなく、もっとも切りやすい人材として外国人労働者も大量に解雇されていたのである。仕事を首になったら生活費だけがかさむわけで、やむなく国に帰ってしまった人も多い。



 豊川市は田植えシーズンを迎えて、あちこちの農家が苗を植えていた。ほとんどが兼業農家だから、田植え作業は仕事が休みの土日に集中するようだ。5月の末に田植えをして、収穫するのは9月の終わり。
 農道を走っているときに出会ったご一家は、ご夫婦と息子さんの三人で田植えを行っていた。お母さんが苗を準備し、お父さんが田植機で植え付けを行い、息子さんがトンボを使って地面をならしていく。
「こういう機械を揃えるだけでも農家の負担は大きいんですよ」
 とお母さん。一年のうちわずか二日しか使わない田植機は100万円ほどだし、トラクターは300万円、刈り取り機は200から300万もする。規模の小さい農家にとってこれらの出費は大きな負担となる。集落全体で数台の農機具を購入してシェアするようなやり方は誰もしていないという。ちょっともったいない話だ。







 隣の田んぼではおじいさんと孫が田植えをしていた。正確に言えば孫たちは田んぼの中で遊んでいただけなのだが。タニシやカエルがいないかと田んぼの泥に手を突っ込んで探し回っている。
「うちで使っているのは安物の田植機で、人が後ろから押さなきゃならないから、足腰がしんどいんだよ」とはおじいさんの弁。
「でも田植えって面白いよ」
 と言うのは二人の孫。そう、僕も何度かやったことがあるけれど、田んぼの泥に素足を突っ込むのって、意外に楽しい経験なのである。泥の温かみやヌルヌルとした触感は、普段の生活からは得ることができない感覚だ。たぶん二人の孫はこの泥の感触から何かを学んでいるはずだ。









 豊橋市を走っているときに、なんとリキシャの絵がプリントされたTシャツを着た男性に呼び止められた。リキシャTシャツ? こんなの初めて見た。
「ごく最近までインドに行っていたんですよ」とモリヤさんが言う。「仕事で3年間デリーに住んでいたんです。このTシャツはそのときのお土産。でも、たまたまリキシャのTシャツを着ていたら、道ばたでばったりリキシャを漕いでいる人に出会うなんてね。ほんとご縁ですね」
 インドと日本はあらゆる点で違っていて、それも含めてインドでの生活は楽しかったとモリヤさんは言う。もちろんリキシャにも何度も乗ったが、インドのリキシャはここまで派手ではなかったので、子供たちも大喜びの様子だった。



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本日の走行距離:67.1km (総計:2957.2km)
本日の「5円タクシー」の収益:1030円 (総計:53340円)

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by butterfly-life | 2010-06-05 20:18 | リキシャで日本一周


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