116日目:雨の初山別(北海道天塩町→羽幌町)
 日本海を横断中の台風4号の影響で、朝から大荒れの天気だった。バケツをひっくり返したような土砂降りが1時間ほど続き、たちまち旅館の前の道路が水浸しになってしまった。昨日に続いて今日もリキシャでは走れないかなぁと思いながら部屋でぼんやりしていると、10時過ぎに雨が小降りになってきた。
 よし、これなら行けそうだ。急いで荷物をまとめて出発する。家族経営の旅館のいいところは時間の融通が利くことだ。少々チェックアウトが遅くなっても文句を言われることはない。おかみさんが「雨が止むまで好きなだけいたらいいよ」と言ってくれる。

 天塩町から海沿いのオロロンラインを南に下る。例のごとく人家のほとんどない道だ。
 遠別(おんべつ)という町に着いた頃に再び雨が降り始めた。本降りになってきたので、慌てて雨宿りできる場所を探した。ちょうど旅館の屋根付き駐車場が目に入ったので、そこで雨をしのがせてもらうことにする。出発の判断は間違いだったのかもしれないと少し後悔するが、今さらしょげていても仕方がない。出発した以上は前に進まなくてはいけない。
 雨が止むのを待つあいだ、近所のコンビニでゆでトウモロコシを買ってきて腹ごしらえをする。夏の北海道にはコンビニにもゆでトウキビが並ぶ。道民の日常食なのである。



 1時間ほど雨宿りをしたあと再び出発したが、雨は完全には上がらず、降ったり止んだりを何度も繰り返した。疲れる天気だ。
 初山別(しょさんべつ)という町で雨宿りをしているときに、小学生の男の子たちが集まってきた。この雨の中、リキシャに乗りたいという。いいですよ、わかりましたよ、どうぞお乗りなさい。子供たちを乗せて近所をぐるっと一回りする。彼らは雨に濡れても平気なようだ。よしよし、強い子だ。
「これで日本一周ってマジすごくねぇ? ヤバイよね」
 と年長の子が言う。参ったなぁ、北海道の子供もこの手の言葉遣いをするのか。
 この町には小学校がひとつと中学校がひとつある。高校へ行くためには隣町の羽幌までバスに乗る。昔は初山別にも高校があったらしいが、人口の減少に伴ってずいぶん前に廃校になった。小学校の全校生徒は50人ぐらいだそうだ。
「今日はどこまで行くんですか?」
「羽幌まで」
「えー、20キロ以上あるっしょ」
「全然大丈夫だよ」
「足の筋肉ヤバくねぇ?」
「ヤバくはないよ」
 実際、足の筋肉はまったく問題なかった。むしろ問題なのは雨の方だった。初山別を出てからも雨は止まず、レインコートを頭から被って走り続けた。大型トラックが跳ね上げる水しぶきで、服もリキシャもずぶ濡れである。

 羽幌町に到着したのは6時半だった。
 羽幌町の道の駅では、コテコテの関西弁を話すおばちゃんに出会った。家は京都にあるのだが、今は旦那さんと二人で車中泊をしながらのんびりと北海道を旅しているという。
「僕も京都生まれなんですよ」
「あら、ほんまかいな!」
 おばちゃんは僕の背中をバチーンと叩いた。いてて。
「ごめんな。きつぅ叩きすぎたな」
 とおばちゃんは苦笑いした。少々酒を飲み過ぎているのか、手加減がわからなかったらしい。
「あたらしらはな、この車で3年ぐらい旅をしとるんよ」
「3年もずっとですか?」
「2ヶ月ぐらいしたら家に戻って、また2ヶ月したら旅に出るっていうのを繰り返してる。九州も3回行ったし、日本全国だいたい回ったよ。これが若い頃からの夢やったんよ。お父ちゃんが定年になって、一緒に旅に出よかって言うてくれたから実現できたのよ」
 北海道にはライダーも多いが、このご夫婦のようにキャンピングカーやワンボックスカーに泊まりながら旅を続ける旅行者も多い。何しろ時間はあるから、マイペースの旅である。
「今がほんまに幸せ。好きなことをして生きてるんやからなぁ。あんたも幸せな人間やない? こないして旅が続けられるんやから」
「そうですね。そうかもしれないですね」


【本当に幸せそうなご夫婦だった】

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本日の走行距離:66.4km (総計:4718.8km)
本日の「5円タクシー」の収益:600円 (総計:63090円)

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by butterfly-life | 2010-08-17 07:30 | リキシャで日本一周


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