131日目:秋田の海(秋田県秋田市→にかほ市)
 午後から大雨に警戒して下さい。
 朝のローカルニュースでアナウンサーは確かにそう言っていたのだが、結局今日まとまった雨は一度も降らなかった。それどころか、午後になると雲が晴れて爽やかな青空が広がった。おいおい、大雨はいったいどこに行ってしまったんだ?
 天気予報が外れるのは珍しいことではないが、ここまでの「暴投」は珍しい。もちろんいい方に外れるのは嬉しいのだが。


【秋田のお葬式では派手な花を並べるのが習わしになっている。まるでパチンコ屋ですね】

 午後からの雨を警戒して、早めに宿を出た。秋田市から由利本荘市、もし雨が降らなければもう少し先まで進む予定だ。
 秋田市を出て、国道7号線を日本海に沿って進む。
 今回の旅では日本中の海を見てきた。南国の色鮮やかな海、瀬戸内の穏やかな海、コンクリートとコンビナートに埋め尽くされた太平洋ベルト地帯の海、オホーツクの寂しい海。船の往来の多い海があり、島が多い海があり、ゴミだらけの海があり、誰もいない海があった。水の色も、波の高さも、潮のにおいも、それぞれ微妙に違っていた。日本は海に囲まれた島国であるという常識を改めて確認した5ヶ月だった。

 秋田の海は「寂しい海」の仲間に入るだろう。ときどき思い出したように漁村が現れる以外、ほとんどの場所で海はただの海だった。水平線の彼方まで目を凝らしても、海水と雲以外には何もない。人の営みを感じることのない広大な自然が続く。





 由利本荘市を通過する頃には天気はすっかり回復していたので、さらに先のにかほ市に向かう。仁賀保の町で畑の草刈りをしているおじさんに出会った。
「これは何を植えているんですか?」
 と声を掛けると、おじさんは「グィーン」というけたたましい騒音をまき散らす草刈り機のエンジンを切って返事をしてくれたのだが、秋田訛りが強すぎてなかなか理解できなかった。
「ぐんたんよ」
「ぐんたんって何ですか?」
「あのよぉ、せぇふのほうが決めたことでよ、60町ある土地の20町は他の作物にしなきゃならねぇんだけども」
「ああ、減反ですね」
「んだ」
 おじさんが手入れをしていたのは枝豆の畑だった。もともとは米を作っていたのだが、減反の割り当てによって枝豆に植え替えたのだという。
 おじさんは最新草刈り機の性能や、害虫であるカメムシの駆除の方法や、南極探検隊の隊長だった白瀬中尉がこの町の出身であることなどを教えてくれたのだが、正直なところ話す言葉の七割は理解できなかった。津軽弁も難解だったが、秋田弁もそれと同じレベルである。しかも秋田の人は早口で、こっちが理解できようができまいがお構いなしに話し続ける傾向があるので、置いてけぼりを食らってしまうのである。



 枝豆のおじさんが熱心に勧めてくれたので、すぐ近くにある「白瀬南極探検隊記念館」に向かったのだが、月曜はあいにくの休館日だったので入ることができなかった。残念。
 にかほ市にはTDKの工場がいくつもあるのだが、これはTDKの創設者である齋藤憲三氏がにかほ市の出身であるためらしい。
 もっともTDKの工場以外にはこれといった産業がなく、にかほ市の人口も減少の一途を辿っている。数年前まで八王子に住んでいたというおじさんと話をしたのだが、30年以上勤めていた東京のメーカーをリストラされ、7年前から故郷に戻って農業を始めたのだそうだ。ここでも主な農業の担い手はセミリタイヤした人たちで占められているようだ。



 にかほ市には温泉を売りにした宿泊施設がいくつかあって、そのうちのひとつに泊まることにした。外観はかなりうらぶれていて、壁のひび割れなんかもそのままという有様だったが、広々とした和室から眺める日本海はとても美しかった。オフシーズンだからなのか、いつもこうなのかは知らないが、宿泊客もほとんどいなくて、大浴場も貸し切り状態だった。はぁ極楽。



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本日の走行距離:66.8km (総計:5517.6km)
本日の「5円タクシー」の収益:0円 (総計:71140円)

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by butterfly-life | 2010-09-15 20:58 | リキシャで日本一周


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