ラバリ族はスタイリッシュな牧民
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 「インド色」を求めて旅を続ける僕にとって、ラジャスタン州に住む少数部族の村々は、砂漠のオアシスのような場所だった。
 特に印象に残っているのは、南部の山岳地帯に住むガラシア族の人々だ。女たちが普段から身につけている前掛け付きの民族衣装は、とりわけ派手で目を引くものだったのだ。


[ガラシア族の民族衣装は派手な前掛け付き]

 しかもガラシア族の女たちはとても堂々としていた。外の人間と接触する機会の少ない少数部族の人々はシャイなことが多くて、カメラを向けられても顔を背けてしまうものなのだが、ガラシア族の女性は終始にこやかで、自然体のままカメラに向き合ってくれた。これほど写真を撮りやすい人たちも珍しい。その代わり(という言い方もなんだけど)、ガラシア族の男性は気弱でシャイだった。女が強くなると、男は弱くなるものらしい。そうやって共同体としてバランスを取っているのかもしれない。










[陽気な女たちとは対照的に、ガラシア族の男はシャイだった。]

 片言の英語を話すアリス君に誘われて、彼のお宅にお邪魔することができた。アリス君には兄弟が6人と姉妹が4人もいて、総勢15人の大家族とともに暮らしていた。インドでもきょうだいが10人を超える家族はかなり珍しくなっているが、ガラシア族の村ではまだ当たり前だという。

 家財道具は例によってとても少なかったが、一家の寝室にはなぜ大きなポンプがでんと据え付けられていた。ここは雨が少ない地域なので、農業と生活に必要な水は深い井戸の底から汲み上げている。ポンプは家族の命を支えるために欠かせない道具であり、盗まれたり壊されたりしないよう、家族同然に扱われているのである。



 村には電気は来ていないが、屋根に取り付けた太陽光パネルを使って携帯電話と懐中電灯を充電していた。電気が通らない辺境地域でも、ちゃんと携帯が使えるというのは驚きだった。電波塔をひとつ建てさえすれば広いエリアをカバーできる携帯電話網は、少ない投資で整えることができるインフラなのだ。

 アリス君は畑でソープという作物を作っていた。ソープの実は緑色の小さな粒で、これを乾燥させるとレストランなどで食後に出される清涼剤のフェンネルになる。他には小麦やタマネギ、トマトやトウガラシなども作っているそうだ。


[清涼剤のフェンネルになるソープという作物]

 素敵な笑顔とともに印象的だったのは、ガラシア族の人々のにおいだった。水が貴重だということもあるのか、色鮮やかな衣装はあまり頻繁には洗濯しないものらしく、そこに染みこんだ体臭と家畜のにおいが混ざり合って、独特のにおいを放っていたのだった。

 それはネパールやベトナムの山岳地帯で嗅いだのと同じ、紛れもない「山の民」のにおいだった。


 放牧の民であるラバリ族は、男も女もどちらも派手な格好をしていた。男たちは真っ赤なターバンを頭に巻きつけ、白い服を着て、家畜を追うための長い杖を持っていた。女たちは美しい刺繍が施されたサリーを着て、白い腕輪をいくつも身につけていた。彼らもまた一目でそれとわかるユニークなスタイルを持つ部族だった。


[赤いターバンに白い服がラバリ族の民族衣装だ]



 僕が訪れたのはグジャラート州とラジャスタン州の州境にあるマカワルという村だった。ここには牧民であるラバリ族の他に、戦士の血を引くラジプート族などが隣り合って暮らしているという。

 この村に住むラバリ族は、主に山羊と羊を飼育して生計を立てている。チャーチと呼ばれる山羊のミルクは大切なタンパク源であり、貴重な現金収入源でもある。一度沸騰させたものをそのまま飲むことも多いが、茶葉と砂糖を入れてチャイにすればさらにおいしくなる。


[山羊のミルクでチャイを作るラバリ族の奥さん]


[チャラムというパイプを使って一服する男]

 また、毛織物の原料になる山羊の毛は、4ヶ月に一度大きなハサミを使ってジョキジョキと刈って、市場に売りに行く。売値は1キロあたり100ルピー(150円)。以前はこの山羊の毛を自分たちで織って、毛布などを作っていたそうだ。村を案内してくれたラマラム君の父親が織った毛布は、20年経った今でも大切に使われているという。

 ラバリの男たちはヘビースモーカーで、食事やチャイの時間が終わると、必ずチャラムというパイプを使って一服する。村の成人男性はほぼ全員タバコを吸うようだ。北インドは全般的に喫煙率が高くて、町の人から「タバコをどうぞ」と勧められたり、逆に「タバコ持ってない?」と聞かれたりする機会も増えた。どうやらインドの喫煙率は「北高南低」の傾向があるようだ。

 ラマラム君の友人である26歳のサミララン君は、翌日に迫った結婚式の準備に追われていた。新郎はポーティアと呼ばれる赤いターバンを頭に巻き、金のペンダントを首にかけて結婚式に臨む。ペンダントには純金が20グラムも使われているので、5万ルピー(7万5000円)もしたそうだ。ピアスもやはり金製で、一組5万ルピーだったという。村人の収入からすればとても高価なものだ。


[結婚式を翌日に控えたサミララン君。ポーティアと呼ばれるターバンを頭に巻けるのは、結婚した男性だけだ。]

 ラバリ族は、結婚後に夫が妻の実家へ引っ越す「婿入り婚」の伝統があり、新郎は持てる財産のすべてを金銀などの装飾品に替えてしまうという。今でこそ定住生活を送っているが、もともと草地を求めて移動し続ける遊牧民だったラバリ族には、「財産は常に身に付けておくべし」という考え方が根強く残っているのだ。

 いずれにしても白服に赤いターバン姿のラバリ族の男は、とてもスタイリッシュで決まっていた。ただ草原でタバコを吹かせているだけなのにカッコ良く見えてしまうのも、彼らが伝統的なスタイルを自信と誇りを持って着こなしているからに違いなかった。






[昼食はラマラム君のお母さんが作ってくれた。かまどで焼いたチャパティーにギーをかけて、野菜のカレーに浸して食べる。食堂で出されるチャパティーより厚みがあり、もっちりとしていて味もよかった。]


[ラバリ族の女性はとても派手なサリーと、白い腕輪をたくさん身に付けているのが特徴的だ。しかし未亡人になると質素なサリーしか着ることが許されない。]


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by butterfly-life | 2013-02-05 09:32 | インド色を探して


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