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エコノミークラス症候群?
 今、インドネシアのスマトラ島にいます。
 パダンという町で撮影の仕事をしているのです。
 パダンは去年の9月30日に1500人以上の死者を出す大地震の襲われたのですが、その地震で被災した子供たちを援助している企業とその活動をサポートしているNGOの様子をカメラに収めているのです。

 震災から4ヶ月後のパダンの町を見て回ったのですが、官庁舎やホテルや大型ショッピングセンターなどが軒並み倒壊している一方、木造の古い家屋やオランダ統治時代から残るアパートメントが無傷で残っているのが印象的でした。
 特にダメージが大きかったのが公共施設と学校です。どうも最近作られた建物は見栄えや大きさばかり重視して中身がスカスカだったようです。構造にも使っている材料にも問題があったのです。

 煉瓦とコンクリートで作られた建物は、一見すると強そうだけど大きな揺れに対する「しなり」がないから、いとも簡単に崩れてしまう。だからパダンでは伝統的な木造家屋の良さが改めて見直されていると聞きました。

 スマトラ島というと2005年12月に発生した大津波が記憶に新しいですね。この津波では北西部のアチェ州を中心に20万を超える死者が出ました。僕も津波直後とその1年後の二度にわたってアチェを訪れましたが、街ひとつを丸ごと壊滅させてしまうエネルギーの凶暴さに呆然としたことをよく覚えています。

 インドネシアはたびたび大地震に襲われています。スマトラ島だけでなく、ジャワ島でも地震が多い。それでも今建てられている家が耐震性を備えているわけではなく、煉瓦を積み上げてコンクリートで固めただけという安直な作りのものが大変に多いのです。

 インドネシアの人々だっていつかは大地震に襲われるという危機感は持っているのです。でも地震というのは何十年あるいは何百年に一度という頻度で起きるわけで、たとえそれが壊滅的な被害をもたらすとしても、それに備えて具体的な行動を起こすのが難しい。どんな悲惨な記憶でも何年かすれば必ず薄れていくものですから。

 前回、スマトラ島を旅したときには、この広大な島を1ヶ月かけてバイクで横断しました。ひどいスコール降られながらジャングルの悪路を走ったり、おばちゃんが趣味でやっているような看板も出ていない民宿に泊まったりと、かなりハードな旅でした。もちろんその分エキサイティングだったわけですが。そしてこの経験が、その後ずっと続くバイクの旅、リキシャの旅へとつながっていったのです。

 今回は仕事だから状況がまったく違います。他のスタッフと一緒に一流ホテルに泊まり、まともなレストランで食事をしています。清潔で広く空調の効いた部屋。真っ白なシーツ。バスタブを備えた浴室。
 でもどうしてでしょう。一流ホテルの部屋にいるとなんとなく落ち着かないのです。「安宿慣れ」した自分がこういうところにいてもいいのだろうかと思ってしまう。エアコンよりも窓を開けてファンを回していた方が眠りやすい。
 はぁ、こういうのをきっと「エコノミークラス症候群」って言うんでしょう。いや、単なる貧乏性かな。
by butterfly-life | 2010-01-23 23:45 | リキシャでバングラ一周


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