11時に亀戸を出発して、まず東京スカイツリーに向かう。遠くからでもそのデカさは際立っている。まさにバベルの塔だ。すでに高さは300mを超えていて、まもなく東京タワーを抜くという。
スカイツリーの前でリキシャと記念撮影。でも塔があまりにも高くて、どうやっても同じフレームに収まらない。超広角レンズが必要だった。このあたりではみんな首を45度傾けて塔を見上げているので、派手なリキシャが通っても誰も気にとめない。 両国国技館に向かう。本場所中ではないので閑散としている。修学旅行生を乗せたバスが止まっているぐらいだ。 国技館の前でスーツ姿の若者に声をかけられた。トミヤマ君。大学3年生で、ただいま就職活動の真っ最中だそうだ。今日は「ハッピーターン」で有名な亀田製菓の面接に行くという。浅草周辺にはもともと煎餅やおかきの会社が多くて、亀田はその中でも大手だ。どうして米菓会社に絞って就職活動をしているのかは聞きそびれたけれど、就職戦線の厳しさに負けずにがんばって欲しい。 【就職活動がんばれ!】 秋葉原の近くでサラリーマン風の男性が「写真を撮ってもいいですか?」と携帯カメラを向けた。好きなだけどうぞ。もちろんウェルカムだ。彼は「5円タクシー」には乗らなかったものの(「今は急いでいるので」と言っていたが、あの人混みの中でリキシャの客席に乗るのはかなり恥ずかしいと思う)、財布から40円を出して「バングラデシュの子供たちに」と渡してくれた。最初のお客さんであった。 【九段下で出会った大学生がリキシャを試し乗り。ペダルの重さに顔をしかめていた】 水道橋にあるパロル舎のオフィスに向かう。写真集「この星のはたらきもの」と「スマイルプラネット」の出版元だ。 このパロル舎、坂の上にあるのでリキシャを引っ張り上げるのに苦労した。バングラデシュではなかった長い坂。日本縦断ではずっと悩まされることになるであろう坂である。 編集の渡さん、黒田さん、石渡社長を撮る。今日は昼間から飲んでいない様子。新刊発売が立て込んで忙しそうだった。去年発売した「この星のはたらきもの」もまずまずの売れ行きだと聞いて安心する。 水道橋から南に下って赤坂に。TBS本社のある赤坂サカス前で天田さんと会う。来月BSで放送されるドキュメンタリー番組のディレクターである。僕も写真家として取材に加わっているので、撮影風景も放送される予定。 この頃から風が強まってくる。僕はTシャツ一枚なのに、天田さんはダウンジャケット姿で冬の装い。暑いのか寒いのかよくわからなくなってくる。 【赤坂サカスの前で。やっぱり浮いていますね】 国会議事堂、霞ヶ関周辺は制服姿の警官がやたらと多かった。国の中心だから警備も重々しいのだ。 白くて高い壁が続く場所があったので、リキシャを止めて写真を撮っていると、一人の警官がつかつかと近寄ってきた。職務質問である。 「ご存じですか? ここは鳩山総理の家なんですよ」 「ええ? 首相官邸なんですか!」 全然知らなかった。へぇここが首相官邸なのですか。日本の首相ともなると、こんなに高い塀に囲まれて生活しているのです。 それにしても、それとは知らずに首相官邸の前で記念撮影をしていたというのも間抜けな話である。警察が怪しむのも無理はない。ちょっと頭のおかしいテロリストだと疑われたのかもしれない。 「でもテロを起こす人間はもっと目立たない格好でやってくるんじゃないですか?」 「そうでもないんです。派手な人もいるんです」 あーそうか。街宣車とかはそうですものね。 【首相官邸前からリキシャがお伝えしました】 皇居の桜田門の前で写真を撮り(「俺ははとバスか」と言いたくなるような名所巡りですね)、銀座通りを北に向けて進む。東京の人々はおおむねクールで、わざわざリキシャに声をかけてくるような人はいない。横目でちらっと見ることは見るけれど、「そういうのもアリだね」という態度を貫いている。 でも子供は素直だ。幼稚園の送迎バスが追い抜いていったとき、子供たちは目をらんらんとを輝かせてリキシャを眺めていた。 「すごーい!」「ごうかなじてんしゃー!」 口々に叫ぶ。こういう反応をしてもらえると嬉しい。 リキシャの初乗客になってくれたのは、亀戸のおばさんたちだった。 亀戸天神に梅を見に来たという主婦。千葉県からとれたての野菜をトラックで運んできて、神社の前で売っているという農家のおばさんなど。特にもんぺ姿の産地直送おばさんは初リキシャに大いに興奮していた。 「もう30年もここで野菜を売り続けてるけどね、こういうものを見たのは初めてよ」 【ぶっとい大根を手にしたおばさん】 【亀戸天神に毎日欠かさずお参りしているというおばあさん。代々理髪店を経営しているそうだ】 亀戸天神ではバングラ人の若者に出会った。ボリシャル出身のラフマン君。来日5年。日本語も流ちょうだ。今は錦糸町の焼き肉屋で働いているそうだ。 彼もリキシャの出現に目を丸くしていたが、驚いたのは僕も同じだった。こんなところでバングラ人に出会えるとはね。 【バングラ人が東京でリキシャ漕ぐ。なかなか見られない光景である】 久しぶりのリキシャはヘビーだった。アップダウンが多くて思ったほどペースが上がらなかった。強まった風にも邪魔された。 でも日本縦断に向けての手応えはつかめた。 うん、行けそうだ。 ********************************** 本日の走行距離 : 30.5km 本日の「5円タクシー」の収益 : 270円 **********************************
by butterfly-life
| 2010-02-26 18:13
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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