先日、ブログを読んでいる方から長いメールをいただきました。まずはそれを紹介しましょう。
三井さんはじめまして。 私は兵庫県在住の○○と申します。 この場を借りて一言お礼を申し上げたいと思い、唐突ですがメールを送る事にしました。 昨年、私は念願のバックパッカーになるべく仕事を辞めたものの、時間と資金を得たときにはそれを実行する勇気を失っていました。 そして、なかなか思い切れずにだらだらと不完全燃焼な毎日を過ごしていました。たくさんの人の旅行記を見ては、それに自分を投影して自分を励まそうとしましたが決心がつきませんでした。 そんなある時、三井さんのブログを見ていたら、ある言葉に出会いました。その言葉を目にした瞬間に、私の全ての意識がそれに捕らえられました。 ―場所はどこだっていい さあ旅に出よう― 次の瞬間に、私の中で四方八方を向いていた矢印が一斉に、一方に、真っすぐに向いたような気がしました。その時から私の旅に向けた旅が始まりました。 それは私が理想を実現したいという強い願望を、いつも思いつく限りのリスクや不安要素に置き換える小心な自分の葛藤が、限界温度に達した時に見つけた言葉でした。でもその言葉に出会ってからは、なんだか気持ちが軽くなり心の中にできた羅針盤にしたがって、一歩ずつ足を踏み出すことがきました。 そして昨年末、ついにネパールに一ヶ月の旅行に行ってきました。ネパールが良かったという事も然ることながら、自分にも出来たという達成感と充実感でいっぱいでした。なんだか嬉しくなって、帰国して数日後にまたタイ、ラオス、ベトナム、カンボジアに行ってきました。 昨日やっと帰宅して、今こうしてメールを書くまでに至ります。 もちろん、旅行にいこうと決めたのは自分自身です。全て私の人生に於ける出来事は私自身の責任だと思っています。 でも、私が最も必要としていた言葉を最も必要としていた時に出会ったのは、とても幸運だったと思います。そして何より、その言葉を綴って下さった三井さんにとても感謝しています。本当にありがとうございます。 一つの壁を越えた事の達成感が何より嬉しくて、まだまだたくさんある眠ったままの希望を実現していく事に、ためらいや、迷いを感じなくなりました。今回の旅で、たくさん泣いて、たくさん笑って得た経験も活かして、これからも前向きに毎日を過ごしていきます。 最後に、三井さんとたびそらの読者を含め、三井さんに関わる全ての人の幸せをお祈り申し上げ、終わらせて頂きます。 僕の言葉がきっかけとなって、旅の素晴らしさを知ることができたというのは、とても誇らしいことです。こういうメールをいただくと、10年近く愚直に更新を続けてきて良かったなぁと心から思えます。 <思いつく限りのリスクや不安要素に置き換える小心な自分の葛藤> この言葉、すごくよくわかりますよ。僕自身がそうだったから。 「やらない理由」というのはいくらでも思いつけるんですね。お金がない、時間がない、犯罪に巻き込まれるかも、テロに遭うかも、病気になるかも、飛行機が落ちるかも・・・リストはいくらでも長くすることができます。 僕が本やブログで伝えたいのは、とてもシンプルなことなんです。 「心配事のリストは、いったん旅に出ればさっぱり消えてなくなる」 まずやるべきなのは「地球の歩き方」のトラブル欄を熟読することではなくて(できることなら破り捨ててしまいましょう)、小さめのバックパックを買ってきて荷物を詰め込むことなんです。 未知なる世界に飛び込む前というのは誰だって不安なものです。 沢木耕太郎さんの「旅する力 深夜特急ノート」にもこんな言葉が出てきます。 <どうしても行かなくてはならないのだろうか。別に行かなくてもいいのではないか。行かなくてもいい理由をいくつも数え上げるのだが、どれも決定的な理由ではない。そうこうしているうちに行くと決めていた日が近づいてきて、仕方なく出発するのだ。(中略)しかし、ひとたび出発してしまうと、それまでの逡巡は忘れてしまい、まっしぐらに旅の中に入っていってしまう> 一人旅をしたことがない人には、この感覚がなかなかわからないと思います。 長い旅に出ようとする直前、僕は(そして沢木さんも)それほど弾んだ気持ちではない。少なくともウキウキしてはいない。面倒だなぁ、なんて内心舌打ちをしている。 でも「ひとたび出発してしまうと」その気持ちが180度変わると知っているから、とにもかくにも準備を整えて空港に向かうわけです。 あなたが僕のブログを探し当て、ある特定の言葉を見つけて「これだ!」とひらめいたのは、すでにあなたの心の中にその言葉に反応する準備が整っていたということに他なりません。きっとあなたは僕のブログを読まなくても、どこかで別の言葉を見つけたでしょう。 僕ができるのは最後の最後に軽く背中を押してあげること。「今の状態を維持したい」という気持ちと「この日常をひっくり返したい」という気持ちとの間で葛藤を続けている人に、「こっちの道も悪くないよ」と指し示すことだと思っています。リアルな標本として。 「リキシャで日本縦断」も今の僕にとってはまったく未知のもの。どういう結末になるのかわからない。 それでもひとたびペダルを漕ぎはじめてしまえば、いい風が吹くに違いない。そういう確信があるのです。
by butterfly-life
| 2010-02-28 11:44
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 ![]() 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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