さぁ、日本縦断のはじまりはじまり。
亀戸から有明のフェリー乗り場まで13キロの道のりを進む。 途中までは順調に走っていたが、豊洲でチェーンが切れるというアクシデント発生。なんてこった。 ちょうど自転車で通りかかったおじさんに「この辺に自転車はありませんか?」と訊ねると、さほど遠くないところにあると教えてくれた。ありがたい。 自転車屋はクールだった。派手なリキシャの登場にも眉ひとつ動かさず(周りのおばちゃんは「わー、なにこれ? このあたりじゃみないわねー」と言っているのに)、余計な質問を一切口にすることなく、さっさとチェーンをつないでくれた。840円なり。プロフェッショナルな態度だが、新種の自転車登場に彼の職業的好奇心はいささかもくすぐられなかったのだろうか。それとも仕事中は余計な口をきかないと決めているのだろうか。 ![]() そんなこんなでフェリー乗り場に到着したのは、予定を大幅に遅れて午後5時半だった。 フェリー乗り場は立派な建物で、空港にあるようなボーディングブリッジがついている。 フェリーも予想以上に大きかった。全長166.0m、総トン数1万1114トン。立派である。港と船腹はスロープで結ばれていて、今から乗り込もうとする自動車が列を作って待っている。もっとしょぼい船を想像していたのだが、いい意味で裏切られた。 ![]() 東京・徳島・北九州をむすぶフェリー「おーしゃんのーす」 運賃は大人(二等寝台)が11790円。自転車持ち込み料が2820円。実はリキシャを自転車と認めてくれるかどうか心配していたのだが(バイクや自動車扱いだと一気に値段が跳ね上がるのだ)、誘導員は拍子抜けするほどあっさり「はい、自転車の方どーぞー」と言ってくれたので助かった。この誘導員はとても親切で、僕がフェリーの前で記念撮影をしていると「こっちの方が船名が見えていいですよ」とわざわざ案内してくれた。 6時に乗船開始。自転車は僕一人だけ。言うまでもなくリキシャも僕一人だけである。 リキシャは船が揺れても動かないように、木のブロックとワイヤーで固定される。 ![]() 船内は快適だった。このフェリーには一等や二等といった区分がなくて、すべて二段ベッドの相部屋だが、乗客が多いわけではないのでゆったりと使える。ロビーやフードコーナーも広くて清潔。シャワールームと浴場も無料で24時間使える。意外なほど広い大浴場はこの船のおすすめスポットだ。夜の海を眺めながら、「はー、極楽極楽」とため息をつこう。さすがは日本の船だね。 乗客は全部で40人ぐらい。定員148名に対しては少ないが、この船は自動車や貨物の運搬が主で、旅客はおまけみたいなものだから、これでも元が取れているのだろう。 速さを求めるのなら飛行機や電車だし、安さを求めるのなら長距離バスを使えばいい(8500円であるようだ)。確かに船なら足を伸ばして眠れるし、眺めもいい。けれど海が荒れると船酔いするし、所用16時間はあまりにもスローだ(バスなら9時間だ)。わざわざフェリーに乗って徳島に行く人は、よほど船が好きなのだろう。それとも他の理由があるのか? ロビーでは若者が三人でトランプをしていたり、おっちゃんたちがビールを飲みながらテレビでオリンピックの閉会式を眺めたりしている。船の乗っているというよりは、スーパー温泉の待合所にいるみたいな雰囲気だ。 船は午後7時にゆっくりと港を離れる。低気圧の接近に伴い、波が高くなっています、とのアナウンスがある。沖に出たら揺れるかもしれない。 なぜ徳島からスタートするのか。ここで改めて説明しておこう。 もともとは沖縄からスタートして北海道に向かうつもりだった。それが難しくなったのは、東京と沖縄を結ぶ唯一のフェリー「ありあけ」が去年の11月に座礁事故を起こしたからだ。高波を受けて横倒しになったまま動けなくなってしまったのだ。 調べているうちに東京と徳島を結ぶフェリーが出ていることを知った。当初の予定では四国はパスするつもりだった。通ったとしても瀬戸内海沿いを少しかすめる程度だと思っていた。でもせっかくだから四国に寄り道して沖縄を目指すのも悪くないという気がしてきた。 まず徳島から四国を横断し、高知県の宿毛から宮崎県の佐伯を結ぶフェリーで九州に渡る。そして鹿児島から沖縄を目指す。そういうルートが浮かんできた。 四国は大学生の時に一度だけ行ったことがある。 なにも知らないのと同じだ。だからこそ楽しみだ。 *********************************************** 本日の走行距離 : 13.2km 本日の「5円タクシー」の収益 : 0円 ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-03-02 18:52
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 ![]() 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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