5日間ずっと走りっぱなしで筋肉が悲鳴を上げていたのと、向かい風が強かったために、昨日は一日ゆっくりと体を休めていた。それでも朝リキシャを漕ぎ始めてみると、まだ体は重く気怠かった。向かい風の中を無理に進んできたのがダメージとして残っているようだった。
宮崎市を出て西の都城市に向かう。中盤までずっと上り坂の続く山越えルートである。幸いにして風はほとんどなく、からっと晴れ上がって気持ちがいい。 今日はたくさんの方から差し入れをいただいた。たこ焼き屋のおばちゃんが焼いたばかりのたこ焼き1パックをくれたり、車に乗っている若い女性がカロリーメイトとスポーツドリンクの入った袋をさっと手渡してくれたり(マラソンの補給地点のようだった)、中年のご夫婦が「これ作ったばかりやけど」とまだほかほかと温かいおにぎりを渡してくれたりした。 お墓参りに行く途中だというおばさんは、お茶とパンをくれたあとに、「しっかり食べんとあかんよ。それから睡眠も大事やからね。あんたを見てると、横浜で一人がんばっちょる息子を思いだすんよ」と言った。ありがとうございます。息子さんの分まで(?)がんばってペダルを漕ぎます。 【たこ焼き屋を30年以上続けているというおばさん】 宮崎県南部では桜はすでに満開状態。25度を上回った一昨日の陽気で、一気に開花したようだ。きつい坂を登りきったところに桜並木があったので、リキシャを止めて一休みする。いただいたばかりのおにぎりをほおばり、お茶を飲む。頭上のウグイスが澄んだ鳴き声を響かせる。汗がすっと引いていく。 小学校の遠足もこんなだった。みんなで山に登り、歩き疲れた頃、見晴らしのいいところでお弁当を広げる。ただのおにぎりなのに、すごく美味しく感じるのか不思議だった。そう、空腹は最大の調味料なのだ。 【満開の 桜の下の 春リキシャ】 軽自動車のおばさんからいただいた「おーいお茶」の缶をふと見ると、面白い俳句が書いてあった。「伊藤園・新俳句大賞」で佳作を受賞した8歳の作品。 <じてん車でどこまでいくかきめてない> お、俺のことじゃん、と思ってしまいましたよ。どこまで行くのか、どこまで行けるのか、決めていないけれどもとにかく進もう。 8歳でこの気持ちを言葉にできる彼は、将来きっと立派な(?)旅人になることでしょう。どこまで行ってもいいんです。気持ちのおもむくまま、限界を決めないまま、進んでください。 【ニンジンを収穫する農家のおやじさん】 青井岳を過ぎてようやく下り坂になる。山之口から都城盆地に入る。とても静かな農村地帯が続く。道路にはトラクターの姿がちらほら。道ばたに座り込んで世間話をしているおじさんが「ここはえぇところよ。静かで何もないけどな」と言う。 このあたりは畜産が盛んな土地で、巨大な牛舎がいくつもならんでいた。黙々と与えられたエサを食べ続ける牛たちが、リキシャがそばを通りかかると興奮した様子でこちらにぬっと首を突き出すのだった。闘牛が赤い色に興奮するように、この牛たちもリキシャの強烈な赤に反応しているのだろうか。 【なんかヘンなものが来たぞ、と牛も興奮気味】 都城市は宮崎県で第二の人口を擁する主要都市なのだが、駅前もなんだか寂しくて、とても「都市」と呼べるような規模ではなかった。ちょっと大きめの田舎町といった風情。 そのせいなのか、都城の市街をリキシャで走っていると頻繁に声をかけられた。本職のタクシー運転手が「わしも5円タクシーに乗せてくれ」と言ってきたり、カップルと一緒に記念写真に収まったり、とにかくにぎやかである。宮崎市内での反応とはまるで違っていた。 【「5円タクシー」のライバル(?)本物のタクシー運転手。飲み会が終わる夜が稼ぎ時だ】 「これから日本全国を回るんだったら、ぜひ都城の良さを伝えてくださいね」と若い女の子から言われる。 「都城の良さっていうのはなに?」 「人が温かくて、気候が良くて、チキン南蛮が美味しいこと」 なるほどなるほど。気候の良さも、人の温かさも、まさに今日ずっと感じてきたことである。 で、三つ目のチキン南蛮だけど、ようやく今日の夕食で食べる機会に恵まれた。もちろん美味しかった。 *********************************************** 本日の走行距離:57.8km (総計:789.3km) 本日の「5円タクシー」の収益:2725円 (総計:18825円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-03-23 22:43
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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