今日も朝から雨が降っていた。これで三日連続の雨である。
参ったなぁ、今日も濡れリキシャかぁと思っていたのだが、荷物をまとめているあいだに雨は上がってくれた。 国分から鹿児島市までは海沿いの道だから比較的平坦で進みやすい。しかし国道10号線はその交通量のわりに道幅が狭すぎるので、ときどき僕のリキシャが渋滞を引き起こしてしまった。申し訳ない。 道幅が狭いのは、海岸線の間際まで峻険な山が迫っているからである。広い道を作るスペースがないのだ。大型トラックやトレーラーがばんばん走っているので、騒々しくて排気ガスもひどい。走っていて気持ちの良い道ではなかった。 ![]() 【鹿児島湾には漁のためのフローティングハウスが並んでいた】 風景は雄大だった。鹿児島の象徴である桜島がどーんと目の前にそびえている。残念ながら今日は雲が多くて山の全体を見ることはできなかったが、それでもこの活火山のスケールは十分に感じることができた。 そういえば去年行ったパプアニューギニアのラバウルも桜島と同じように活火山があり、今でも噴煙を上げていた。僕らが取材で火山の近くに行ったとき、ちょうど噴煙と夕立が同時に起こって、黒い雨が降ってきた。車のボディーがたちまち真っ黒になるほどの大量の灰を含んだ雨だった。鹿児島の人は桜島の噴煙に悩まされていると聞くが、あんなものが空から降ってきたらそりゃたまらんよなぁと思ったものである。 ![]() 【雲に隠れた桜島をバックに派手リキシャ】 国道10号線を走っているときに、軽自動車に乗った男性が後ろから声をかけてきた。 「やっぱりここを走っていましたか。いやー、会社を抜け出してきたんですよ」 彼はここから車で1時間ほど離れたところで働いているのだが、僕が鹿児島市に向かっているとブログに書いているのを読んで、いてもたってもいられなくなって追いかけてきたのだそうだ。 「リキシャを一目見ておきたくて。あの、うちの会社にはこのことは内緒なんで、写真はNGってことで」 わかりました。そりゃ「会社を休んでリキシャを見に行った」なんてことがバレれば、ちょっとまずいことになりますよね。 「で、今から会社に戻るんですか?」 「いいえ。午後からはもう休みです」 どうやら彼はリキシャ休暇を取ったらしい。 鹿児島市までは35キロの道のりなので、午後2時過ぎには市内に入ることができた。幸いにして雨が降り出すこともなく、気温も10度までしか上がらずに涼しかったので、体力的には楽な一日だった。 鹿児島の港近くで、軽トラックを運転しているおじさんと話をした。おじさんは薪で焚くお風呂を作る仕事をしているという。ガス給湯器や電気温水器がこれほど普及した現代になぜ「マキ風呂」なのかと不思議に思うのだが、おじさんによればマキ風呂は安いしエコなのだという。 森林が豊かな鹿児島の田舎では、その気になればいくらでも燃料用の薪が集められる。いらない間伐材などをタダで引き取って、風呂で燃やすことができるらしい。つまり燃料コストはゼロである。タダより安いものはなし。 問題はマキで風呂を焚くのが面倒だということだ。ボタンひとつ、というわけにはいかない。温度調節も容易ではない。沸くのに時間もかかる。だから実際にマキ風呂を導入しようという人はあまり多くはなく、おじさんも儲かってはいないようだ。 ![]() 【マキ風呂のおじさん】 鹿児島市は都会だった。「天文館」という不思議な名前の通りを中心に、活気のある商店街、飲み屋街、若者向けのファッション街などが並んでいる。東京圏や関西圏にいるとこういう街の成り立ち方が当たり前のように感じるけれど、全国に散らばる地方都市はどんどん分散化、チェーン店化が進み、味気ないものになっている。多様なお店が共存するためには、ある程度の人口規模が必要だということなのだろう。 鹿児島港の北埠頭から喜界島、奄美大島に向かうフェリーが出ている。本日はこれに乗って喜界島に向かう。 フェリー乗り場の前には、僕を待っているおじさんがいた。ブログを見てわざわざ見送りに来てくださったのだ。 「あんがい普通に乗ってるんやねぇ、リキシャ」と言われる。リキシャが町を走るともっと大騒ぎになるのかと思っていたらしい。 場所にもよるけれど、大騒ぎになるなんてことはまずありません。ほとんどの人はちらっと横目で見ておしまいなのです。えー、なになに、それどーしたのよ、ちょっと、なんて話しかけてくる人はごくたまにしかいないのです。たとえばこれがバングラデシュだと、「おい、ガイジンがリキシャに乗っとるぞ」と村中が大騒ぎになるんだけど、そこがバングラ人と日本人の国民性の違いなのですね。 フェリー「きかい」は午後5時半に港を出港した。最も安い2等(8800円)は仕切りのない大部屋で、12人のお客と一緒に眠る。もっとガラガラなのかと思っていたが、意外に混んでいた。20歳前後の若者が多かい。春休みを利用して帰省しているのだろう。 風が強く海が荒れていたので、船はかなり揺れたのだが、それでも案外ぐっすりと眠れた。左右の大きな揺れが揺りかごのように眠りを誘ってくれたのかもしれない。 *********************************************** 本日の走行距離:40.0km (総計:871.0km) 本日の「5円タクシー」の収益:1150円 (総計:19975円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-03-27 08:16
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 ![]() 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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