「沖縄から北海道まで、日本縦断の旅」
こう銘打っておきながら、まだ1キロも北上しないまま40日が経った。諸般の事情から四国・徳島からスタートしたこの旅も、ようやく今日から本格的なスタートだ。 今日は船を乗り継ぐ移動日である。まず粟国島から「フェリーあぐに」に乗って那覇に戻り、那覇から鹿児島・志布志港に向かうフェリー「飛龍21」に乗り換える。 粟国島の港には昨日お世話になった染織家の小嶺さんが見送りに来てくれた。 「あなたのような人に会えて元気が沸いてきましたよ。ありがとう」 僕らはがっちりと握手を交わした。 「このリキシャが日本のどこかを走っているんだなぁと思うと、なんだか楽しくなってくるね。がんばってください」 本当に嬉しいはなむけの言葉だった。 【粟国島で粟を植えていたおじいさん】 今日の沖縄地方は雨が降ったり止んだりの天気で、北風も強く、リキシャにとっては厳しいコンディションだった。せっかく沖縄に来たのに、スッキリと晴れた空を見たのはほんの数時間ほど。天候にはまったく恵まれなかった。 いったんは雨が上がったのだが、フェリーが那覇・泊港に到着すると待ち構えていたかのようにざーっと雨が降り出した。やれやれ、こんな風に僕の行く先々で雨が降り出すというのを「雨男」というのだろうか。勘弁して欲しいなぁ。 港の書店で時間を潰し、雨が止んだ頃合いを見計らって走り出したのだが、右後輪がパンクしているのに気づいた。まったくついていない。 一応パンク修理の道具は持っていたのだが、それは何の役にも立たなかった。リキシャのタイヤはめちゃくちゃ硬くて、100円ショップで買ったプラスチック製の工具ではまったく歯が立たなかったのだ。仕方なく58号線沿いのサイクルショップで修理を頼んだのだが、そこのお兄さんもタイヤの硬さには相当参っていた。 「何ですかこれは?」 「リキシャっていうんですけどね・・・」 リキシャは本体重量が80キロあり、そこに何人もの客を乗せて走るわけだから、タイヤにはとにかく耐久性が求められる。だからガチガチに硬いのだろう。最後にはお兄さんと店長さんの二人がかりでタイヤをホイールに押し込んでくれた。お疲れ様でした。 パンク修理に予想以上に時間をとられたこともあって、フェリー乗り場のある那覇埠頭に到着したのは出発予定時間の30分前だった。慌ててチケット売り場に向かうが、窓口は閉まっている。あれれ。 「すいませーん。志布志に行きたいんですが」 「志布志? あぁ、飛龍21ならこっちの港じゃないよ。新港だよ」 「ここじゃない?」 オーマイガッ! どうやら港の場所を間違えていたようだ。 「新港ってどこにあるんですか?」 「北の方だけどさぁ、ここから車でも10分はかかるから急いだ方がいいよ」 車で10分? 時計は7時35分を指している。出発予定時刻まで25分しかない。間に合うのか? そのあとは全速力で夜の道を走った。もちろんオール立ち漕ぎである。強い向かい風に息が上がる。5キロほどの道のりを20分で走りきった。ぜぃぜぃ。7時55分、なんとか定刻の5分前に乗船窓口にたどり着いた。 「し、志布志に行きたいんですが、まだ乗れますか?」 「あ、大丈夫ですよー。今日は出港が遅れていますから」 受付の女性はのんびりと言った。ふう、よかったー。何とかギリギリで間に合ったようだ。全身から汗がどっと噴き出す。志布志までの乗船券14200円と自転車代2770円を支払う。 「飛龍21」は沖縄と東京を結ぶフェリーで、去年座礁事故を起こした「ありあけ」の後釜である。 船は豪華だった。広いレストランがあり、バーがあり、売店がある。しかしいずれも閉まっている。それもそのはずで乗客はたった7人なのだ。最大収容人数の92名に対して7人。旅客は貨物のオマケみたいなものなのだろう。わざわざ長時間かけて(東京までは48時間かかる)船の旅を楽しもうなどという人は滅多にいないのだ。料金だって下手したら飛行機よりも高いしね。 というわけで4人部屋を一人で独占することができた。各部屋にはバストイレが付いていて、テレビとソファまで備えてあった。客室に窓がないのは残念だが、これまでになく快適な船旅になりそうだった。 貨物の積み込みが大幅に遅れたらしく、結局フェリーが港を出たのは1時間45分遅れの午後9時45分だった。なんだ、あんなに必死になってリキシャを漕ぐ必要はなかったんだ。ちょっとがっかりである。 【これが「飛龍21」の2等船室。二段ベッドなのを除けばホテル並みの快適さ】 *********************************************** 本日の走行距離:16.7km (総計:1243.5km) 本日の「5円タクシー」の収益:70円 (総計:22145円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-04-19 23:27
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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