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49日目:美肌温泉(鹿児島県いちき串木野市)
 鹿児島市から国道24号線を西に進み、薩摩半島を横断して、いちき串木野市に向かう。
 途中いくつもの山を越える。考えてみれば本格的な山越えルートは久しぶりだ。ここしばらくは鹿児島と沖縄の離島ばかりを旅していたからだ。だらだらと続く上り坂がいつまでも続く。息が切れ、汗が噴き出てくる。でも悪くない気分だ。確実に一歩ずつ前に進んでいるという感じ。Moving forward。


【5円タクシーに乗ってくれたご家族が記念撮影。ちゃんと撮れるかな?】

 峠道を登りきったところに地元の野菜や花を売る小さな産直所があった。大ぶりのタケノコがでんと置いてあるのが目を引く。今日山で採れたばかりの新鮮な山の幸だ。
「あんたこれ一人で乗っちょるの? 後ろにオナゴは乗せんのかねぇ」
 かわいらしい割烹着を着たおばさんが笑顔で声を掛けてきた。
「お母さん乗りますか?」
「いいやー、うちなんかが乗ったらタイヤがつぶれてしまうよー」
「大丈夫ですよ。二人までなら余裕で乗れますから」
 結局、おばさんは恥ずかしがって「5円タクシー」には乗ってくれなかった。その代わりに「お腹が減ったら食べて」と大福をくれた。
「今日はよかご縁があったねぇ。よかよか」
 そう言って手を振ってくれた。



 市来では自転車で日本一周中をしている若者とすれ違った。顔にいくつものピアスをつけ、ギターを背負った今風の若者である。もう6ヶ月も旅を続けているという。お金に困ると路上ライブを行って稼いでいるのだとか。なかなかの強者だ。
「これ100キロもあるんですか? うわ、すげぇ。俺のチャリも40キロあるけど、それでも限界だもんなぁ。マジすげぇっすよ」
 ありがとう。同じ苦しみを分かち合う旅人から「マジすげぇ」の言葉をもらうのは嬉しい。


【市来で見つけた奇妙なホテル「一戸建」。どういう意味なのだろう?】

 いちき串木野市に到着したのは4時半。大きな漁港のある漁師の町である。
 漁港には小さな船がいくつもならんでいた。漁師のおじさんに聞くと、このあたりではアジがよく釣れるそうだ。船で沖合に出て、40mほどの深さまで釣り糸を垂れる。竿を使わずに手で釣り上げるのがここのやり方だ。釣り上げたアジは生きたままの状態でいけすに入れ、都会の料亭などに出荷する。活きがいいシロアジは高い値が付くが、漁だけで食べている専業漁師はほとんどいない。漁師の大半が60歳以上だそうだ。
 ちなみに漁港近くのコンクリート製の堤防は、地元の人たちから「年金波止場」と呼ばれているそうだ。年金をもらっているおじさんたちが日がな一日釣り糸を垂れる姿からそう名付けられたらしい。釣れても釣れなくても潮風に当たるのは健康にいいからと県外からもやってくる人も多いそうだ。



 串木野では国民宿舎「吹上浜荘」に泊まった。日本三大砂丘のひとつ吹上浜の海が一望にできる絶好のロケーションにあり、温泉にも自由に入れるファミリーorシニア向けリゾート施設である。はっきり言って僕には縁遠いタイプの宿だが、こんなところに(なんとタダで)泊まることができたのは、国道3号線を走っているときに総支配人の宇都さんに呼び止められて、「ぜひうちに泊まっていきなさい」と誘っていただいたからである。なんと太っ腹な総支配人。

 この「吹上浜荘」の温泉は美肌を作る「美人の湯」として知られているそうだ。温泉にはまったく疎い僕にも、湯上がり肌に張りがあるのを実感した。
 そう言えば鹿児島市内で出会った化粧品販売員の女の子から、唐突に「肌がきれいなんですね」と言われてびっくりしたことがあった。南海の強い日差しに焼かれてチョコレート色に日焼けした男に美肌も何もないと思うのだが、肌のプロは「いい肌をお持ちですよ」とおっしゃるのである。化粧品でも売りつけられるのではないかと若干警戒してしまったが(もちろんそんなことはなかった)、そんなふうに言われて悪い気はしなかった。
 僕は一年のうち何ヶ月もアジアの太陽の下をバイクで走り回る生活を続けている。それが肌に悪影響を及ぼさないはずはないのだが、今のところシミの発生は最小限に抑えられている。ありがたいことに紫外線には強い肌なのだろう。



 ゆっくりと温泉に浸かって筋肉をほぐし、総支配人と料理長と一緒に海の幸をいただきながら焼酎を飲む。こうして幸せな一日が終わっていく。

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本日の走行距離:47.1km (総計:1445.3km)
本日の「5円タクシー」の収益:325円 (総計:23685円)

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by butterfly-life | 2010-04-27 17:40 | リキシャで日本一周


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