大阪在住のプロカメラマン太田さんと一緒に道頓堀に向かう。「大阪らしい風景の中でリキシャを漕ぐ」というイメージで写真を撮ってもらえないかとお願いしたのである。
以前から、大阪はリキシャが似合う街なのではないかと思っていた。無意味な派手さ、過剰な装飾、どぎつい色使い。リキシャを構成する要素は、大阪の繁華街が持つけばけばしさと重なり合うような気がしていたのである。 徹底的にベタな大阪にこだわろうというのが今回の撮影のテーマで、だからロケ地には道頓堀と通天閣という「ザ・なにわ」的な場所が選ばれた。 道頓堀川の渡る戎橋(通称ひっかけ橋)では例のグリコの看板の前でグリコポーズを決め、「かに道楽」の看板や「フグのずぼらや」のハリボテの前でもにっこり笑って写真に収まった。できあがった写真は底抜けのバカみたいだったが、それぐらいでちょうどいいのだと思う。 ![]() ![]() 続いて通天閣に移動。この街の看板もやたら派手だが、なんといっても目立つのがそこかしこに並んだビリケン像だ。ご存じのようにビリケンさんはもともと通天閣の展望室に奉られていた謎の神様だが、近年そのキッチュな魅力が再び注目を集めるようになり、付近の食べ物屋や土産物屋がその人気にあやかって次々にビリケンさんのクローン像を置くようになったのである。カワイイというよりは不気味なルックスだが、そこがまたいいのだろう。 ![]() 通天閣の前でたこ焼きを頬張るなんて、超ベタなこともやってみた。はふはふ。できたてのたこ焼きは口の中がやけどしそうなほど熱かったが、「うまい!」と声に出したくなるほど美味しかった。有名観光地の行列ができる店なんて、実は味はたいしたことないんだよね、なんて話はよく聞くが、通天閣のたこ焼き屋さんに限って言えばそんなことはありません。やはり食の街大阪。うまくなければ生き残っていけないのだ。 ![]() 駆け足で撮影を終えて、やっぱり大阪はリキシャの似合う街だと確信した。看板、ハリボテ、人形、どれもが大声で「こっち見てぇや」と叫んでいる。そのてらいのない目立ちたがり根性は、リキシャの装飾コンセプトにも通じている。 バングラデシュのリキシャがなぜあれほど派手なのか。いろんな人に聞いてみたのだが、いまだに納得のいく答えは得られていない。誰かが何らかの動機で始めたことなのだろうが、どうしてあんな風な進化を遂げ、それが定着していったのかは誰にもわからなくなっているのだ。 道頓堀や通天閣界隈の派手さも「気がついたらそうなっていた」という類のもので、大阪人の集合的無意識や夢(or悪夢)の表出だと考えた方がわかりやすい。ということは大阪人とバングラ人は似ているということになるのだろうか? そうかもしれない。どちらも気取ったところがなく、フレンドリーで、好奇心が強い。 ![]() 大阪人のフレンドリーさは、たとえば黒門市場に行くとよくわかる。エプロン姿のおっちゃんたちが「らっしゃい! らっしゃい!」と威勢のいい声を張り上げる。リキシャが通りかかると、「これなんや?」「ごっつい派手な乗りもんやなぁ」と方々から声がかかる。なぜかおばちゃんは少なく、おっちゃんの方が多いのが特徴だ。 ![]() ![]() 大阪は自転車の多い町だ。オフィス街でも住宅街でもママチャリで移動している人が多い。地方では自転車に乗っているのは子供だけで、大人はみんな車移動なので、こういう光景も新鮮に映る。 大阪人は信号を守らない、とはよく言われることだが、実際にその通りだった。赤信号でも車が通らなければ平気で歩行者が横断していく。合理的だと思うが、東京の人は意外にこれをやらない。地方でも同じである。やたらせっかちで、交通ルールよりは自分の都合の方を優先させる。そういうところもバングラ人に似ているなぁと思う。 ![]() ![]() 【国道で見かけた奇妙な物体。あの「せんとくん」をどこかへ運んでいるようだ】 大阪を出発して京都に向かう。パナソニックの町・門真を抜けて、淀川に沿って北上し、枚方市から八幡市に入った。そのまま国道1号線を走って東寺、西本願寺の横を通り抜けて京都市内に入る。 京都は生まれ育った土地だから、特別な感慨はなかった。ほっと一息つけるホームタウン。御所の緑も、出町柳の水辺も、いつもと同じだった。 *********************************************** 本日の走行距離:69.6km (総計:2676.8km) 本日の「5円タクシー」の収益:3015円 (総計:45825円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-05-29 09:07
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 ![]() 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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