京都を出発して滋賀県に向かう。
三条通を東に進み、蹴上の浄水場横のきつい坂道を上って山科へ。山科からこれまただらだら続く坂道を上って大津に到着した。 【京都会館の前で氷川きよしの写真の写真を撮るおばさまたち。氷川君の人気はすごいですね】 大津駅では毎日新聞滋賀支局の記者さんが取材に来られた。大津駅の前で写真を一枚。新人なのでまだ写真の撮り方がよくわからないんですとおっしゃるので、駅の看板とリキシャとをうまく配置するような構図の撮り方をアドバイスする。 滋賀県というのは微妙な土地だ。大津は京都・大阪・神戸の三大都市圏に接しているものの、県全体で見れば湖と田んぼばかりが目立つ田舎である。都市と田舎の中間と言ったらいいだろうか。たぶん滋賀県民自身も「滋賀ってなんか微妙だよね」と言い合っているのではないかと推測する。 大津から琵琶湖に架かる近江大橋を渡る。サイクリングにはうってつけの眺めのよい橋だ。釣り人を2,3人乗せたモーターボートがあちこちに浮かんでいる。ブラックバス釣りをしているのだろう。実は僕のいとこは琵琶湖を拠点にしているプロのバサー(バス釣り人)なのである。琵琶湖の釣り人の間では有名人なのだそうだ。あのボートの中にいとこがいるんじゃないかなぁと思って目を凝らしてはみたものの、みんな帽子にサングラスなのでわかるはずもなかった。 草津のコンビニでは「写真撮らせてくださーい」とiPhoneを向けられた。さっそくツイッターに直接アップするとのこと。おぉ、すごいですね、ハイテクですねぇ、と感心してしまった。 ウェブ媒体のニュースを読んでいると、猫も杓子もツイッターをやっているような印象を受けてしまうが、リアルの世界はまったくそんなことはない。ホームページ、ブログという言葉は市民権を得て、僕が「ブログやってますんで見てください」と言えば、まぁだいたいの人には意味は通じるのだけど、「ツイッターやってます」と言っても、「バングラデシュに行ってきました」と言ったときと同程度のリアクションしか返ってこないのである。最新のデジタルガジェットを使いこなしているのは、日本全体から見たらさほど多くはないということを頭の隅に置いておいた方がいいだろう。 草津市やそのお隣の守山市には「子供飛び出し注意」の看板がやたら多かった。どれも帽子を被った男の子が道ばたに飛び出そうという絵柄で、たぶん手作りなのだろう。ひどいところだと数十メートルおきにこの看板が立っている。確かに歩道のない狭い国道で、見通しが悪く、子供が飛び出したら危険なのはわかるんだけど、看板の数を増やせばそれだけ交通事故が減るってわけではないようにも思う。強迫観念めいたものすら感じる。 【中にはこういう看板もあって怖い。わざと叩き折ったんだとしたら、なお怖い】 そういえば今日は危うく交通事故を起こしかけたのだった。僕がではなくて、僕を見ていた人が、だ。反対車線を走っている車から「頑張ってねぇ!」とおばさんが手を振ってくれたのだが、このおばさんがリキシャに見とれているあいだに前の車に急接近してしまったのだ。 「危ない!」 僕が叫んだのを聞いて、おばさんは急ブレーキを踏む。キキッ!間一髪であった。ギリギリ10センチ手前で追突せずに済んだのだけど、あれはひやっとした。ほんと、気をつけてくださいよ。 ドライバーの皆さん、運転中にリキシャを見かけても、どうか冷静に。くれぐれも後ろを振り返ったりはしないでください。以上、リキシャからのお願いでした。 【リアルかかし。表情がシュールだ】 近江八幡市から彦根市にかけての道は変化に乏しかった。田植えが終わったばかりの田んぼが、ただひたすら続くばかり。滋賀県でこんなにたくさんお米が植えられているとは知らなかったが、1時間も2時間もその光景ばかり続くとさすがに飽きてしまった。 安土町には織田信長が築城した安土城の城跡があった。あの「本能寺の変」の直後に消失してしまったので、往時を偲ばせるものは土台の石垣ぐらいしか残っていない。うっそうと生い茂った木々が絢爛豪華だった城の跡を埋めている。兵どもが夢の跡。どんな立派なものを建てても、最後には奔放な自然に飲み込まれていく。アンコールワットもそうだし、マヤの遺跡もそうだった。 【安土城跡の森】 本日は70キロを走り抜き、かなり疲れた。 大津に向かう最初の坂を除いては平坦な道のりだったが、琵琶湖から吹き寄せる北風が強く、思うようにスピードに乗れなかった。「また向かい風の愚痴か」と思われるのも嫌なのでこの辺でやめておくけれど、今日はこの向かい風に加えて途中から冷たい霧雨が降ってきた。気温も12,3度ぐらいまで下がり、季節が2ヶ月ぐらい巻き戻ったかのような冷たさだった。 そんなわけでズーズーと鼻水を垂らしながら、えっちらおっちら進んだのだった。汚くて申し訳ない。 *********************************************** 本日の走行距離:69.5km (総計:2770.7km) 本日の「5円タクシー」の収益:40円 (総計:51300円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-06-01 07:39
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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