一昨日パンクしたばかりだというのに、またタイヤがパンクした。今度は右後輪である。
昨日泊めていただいた石川さんの案内で、近所の自転車屋さんに向かい。仙台市は大都会なので、自転車の需要も多いのだろう。小規模な地方都市だと、自転車に乗っているのはヘルメットを被った中学生のみ、という光景もよく目にするのだが、ここではそんなことはない。 ハヤサカサイクルの社長さんはとても親切で、手際よくパンクを修理してくれた。今回はチューブに既に貼ってあったパッチ(新品で購入したはずなのにどうしてパッチが貼ってあるんだ!)の接着面がはがれてきたことが原因だった。やはりこの暑さでチューブも弱っているようだ。できればチューブを交換したいのだが、28インチ1・1/2という型のチューブはここにも在庫がないと言われた。うーん、困った困った。 ![]() なんだかんだで仙台を出発するのが昼過ぎになり、今日は大崎市まで40キロほどの道のりを進むことにした。 今日は雲が多く、気温もさほど上がらなかったので、これまでの一週間に比べるとずいぶん楽だった。相変わらずTシャツは汗でぐっしょりだが、どうしようもなく汗が出続けて困るというほどではない。 大崎市では小柄でいかにも快活そうなおじさんに声を掛けられた。 「僕もねぇ、昔こういうことをやったことがあるんよ。自転車で浜松から京都まで往復した。520キロを一日で走った」 「一日で?」 「トラックの後ろについていくわけさ。そうすると風の抵抗を受けないから、時速80キロぐらいで走れる」 おじさんは学生時代に自転車競技の選手だったという。その練習のためにトラックの後ろにくっついて国道を突っ走るというような無謀な運転をしていたようだ。それにしても一日520キロというのはすごいですね。そのスピードをもってすれば、一週間で日本を縦断できる計算になる。 「このリキシャはスローペースなんですよ。一日80キロがせいぜいで、それでもとんでもなく疲れるんです」 「若いんだからな、自分のペースでやればいいよ」 おじさんはそう言って励ましてくれた。そうですね。リキシャはマイペースで進むのが一番です。 大崎市では「消しゴムはんこ」職人の鈴木さんとお会いした。 「消しゴムはんこ」とは市販の消しゴムに、名前や住所や似顔絵なんかを彫り込むオーダーメイドのはんこのこと。有名人の似顔絵と辛口エッセイでお馴染みのナンシー関さんがこの分野の先駆者だが、ナンシーさん亡き後も手作り雑貨の一分野としてすっかり定着している。今では消しゴムはんこ専用の消しゴムというのも販売されているそうだ。 鈴木さんの活動拠点は地元宮城県で、県内のフリーマーケットや手作り市ではんこの実演販売を行っている。彼女の「売り」は仕事の速さで、注文を受けてから2,30分で仕上げることができるから、お客さんにとても喜んでもらえるという。 ![]() 「消しゴムはんこって生活に必要なものではないんです。いらないっていえばいらない。だけど、こういうものがひとつあれば温かな気持ちになれる。今の時代、何でもパソコンがあれば作れちゃうし、その方が効率的ですよね。でもわざわざひと手間かけることによって、手作りの味わいが出る。人間っぽさが表れてくると思うんです」 手作りの温かみというのはリキシャにも宿っているものだと思う。ひとつひとつ職人が手作りしているので品質はまちまちだし、工業製品としては失格なんだけど、でもなんとなく憎めない。歪んだところ、いい加減な箇所を手直ししながら使い続けていると、自然と愛着が湧いてくる。そういうところはベルトコンベアーと溶接ロボットで作り上げられたマスプロダクツには出せない味だ。 「今の子供たちは便利さに慣れきっているでしょう。お金を出せば何でも手に入るから、自分の手で作ることを面倒くさがる。でも便利な方、楽な方にばかり流されていると、手作りの楽しさを知らないまま大人になってしまう。それってまずいんじゃないかと思いますね」 鈴木さんはお土産に「たびそら」という文字とURLが入った消しゴムはんこをくれた。彼女のカッターさばきは素人から見ても的確で素早く、まさに「職人の技」だった。 ![]() 【たびそらの文字が入った消しゴムはんこ】 *********************************************** 本日の走行距離:45.7km (総計:3789.0km) 本日の「5円タクシー」の収益:520円 (総計:59580円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-07-30 20:34
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 ![]() 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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