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写真展初日の様子
 なにしろ直前までリキシャを引いて旅をしていたので、写真展の準備は大慌てだった。でも何とか前日の搬入までには間に合ってほっと胸をなで下ろす。夏休みの宿題の山に追われる8月末の小学生の心境でしたよ。

 写真展初日は平日の昼間にもかかわらず、多くの方に来ていただいた。。
 ルーマニアでマッサージ師をやっている男性(首都ブカレストの治安もずいぶん良くなったのだとか)、バングラデシュを自転車で旅してきたという大学生の男の子、大阪から汗をかきながらやってきた方などなど。

 今回の展示では、アジアで撮った「はたらきもの」と、今年リキシャの旅で出会った日本の「はたらきもの」とを並べて展示しているのだが、日本の写真に対する皆さんの反応がとても良かった。
「写真のお年寄りたち、みんないい表情していますねぇ。この人たちの遺影になるんじゃないかしら」
 とおっしゃるのは若い娘さんを連れて来てくださった女性。
「遺影ですか?」
「ええ。変な話だけど、この年になると、自分の遺影をどうしようかって考えることがあるんです。やっぱり輝いているときの顔でお葬式を迎えたいじゃないですか。結婚式の写真を遺影に使おうかって言ったら、娘に『お願いママ、それだけはやめて』って言われちゃったんですけど」
 あまりに若い遺影は変だけど、人生の最期を最高の笑顔で締めくくりたいと願う人は多いのかもしれない。




【展示の様子。シックなギャラリーです】

 平日の昼間は、ギャラリーを「回遊」して回っているらしいおじさんの姿が目立った。首にカメラを提げ、リュックを背負い、カメラマンベストを着ている。特徴は急ぎ足。足早に入ってきて、2,3分で出ていく。まるで宅配便業者のように忙しそうだ。
 きっと彼らにとって僕の写真はあまり興味を引かれる種類のものではなかったのだろう。しかし、それならなぜわざわざギャラリーにまで足を運ぶのだろうという疑問が残る。おそらく彼らはフォトギャラリー周りを日課としていて、それを散歩ルートに組み込んでいるのだと思う。だからどんな展示であっても、まったく興味がなくても、とにかく会場まで足を運んで一通り見る。作品を見るのが目的ではなく、ギャラリーに通い続けるのが目的なのである。回れば回るほど功徳を積めると信じている仏教徒の巡礼のように。

 6時になってギャラリーを閉めてから、六本木の東京ミッドタウンで開かれている「PACIFIC PEDAL LIFE DESIGN」という展覧会に向かった(8月27日まで)。ここに僕の写真とリキシャの旅の様子が展示されているからだ。
 会場には世界中から様々な自転車が集められていた。フランス軍の落下傘部隊が使ったという自転車、給料の三倍もしたという戦前の高級婦人自転車、今でも高松の行商人「いただきさん」が乗っているというサイドカー付きの自転車、中野浩一が世界大会で優勝したときに乗っていた自転車の実物、そして我らがバングラデシュ製リキシャ。どれも個性的で味のある自転車ばかりだ。

 自転車には可能性がある。それはおそらくスピードと効率化をひたすら求め続けて来た20世紀の価値観とは違った、人と社会に対して「開かれた」乗り物としての可能性が。
 5ヶ月間リキシャというヘンテコな自転車に乗って旅を続けながら、僕はそう感じている。


【新旧様々な自転車が展示されたスペース】


【高松の行商人「いただきさん」が乗っているというサイドカー付きの自転車】


【自分の写真がこれほど巨大に引き伸ばされるのは初めての体験。ほぼ等身大ですね】
by butterfly-life | 2010-08-27 11:02 | リキシャで日本一周


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