昨日はザーザー降りの雨だったのでリキシャはお休みにした。これでゴールの10月2日まで一日たりとも無駄にはできなくなってしまった。タイトスケジュール。持ち時間を使い果たしたあとの棋士みたいな心境だ。「にじゅうびょう・・・・じゅうびょう・・・ご、よん・・・先手、五四金」みたいな。
でもまぁ何とかなるだろうと楽天的に考えている。リキシャがぶっ壊れたときも、100キロ以上の距離を歩いて進むことができた。その経験が「何が起きても何とかなる」という自信にも繋がっている。 今日は高岡市から石川県に入り、金沢市、小松市まで行く予定。 朝から強い風が吹き付けていたが、数日前までとは正反対の追い風だったので助かった。何度も書いているが、リキシャは風に左右される乗り物である。追い風なら時速16,7キロが簡単に出せるのだが、向かい風だとどんなに頑張っても時速10キロがせいぜいになる。ペダルの重さも疲労度もまったく違う。結局今日は76キロ走ったのだが、追い風のおかげでほとんど疲れを感じずに済んだ。 高岡市福岡町では少々変わったお祭りが開かれていた。「つくりもんまつり」といってカボチャやナスやオクラなどの野菜を使ってさまざまな人形(つくりもん)を作り、その出来を競う祭りらしい。 この町には300年以上前から、秋に収穫した野菜をお地蔵様に奉納する習慣があったそうだ。やがてそれが野菜を使った人形作りに変わり、祭りの規模も大きくなっていった。地元のテレビや新聞にも取り上げられ、「つくりもん」が巨大化し、使う野菜の量も増えていったという。 しかし10年ほど前からは徐々に祭りの規模も縮小してきている。不況のあおりで協賛する企業が減り、町の高齢化も進んでいるので、「つくりもん」を作る人が減ってきたのだ。今年出展された「つくりもん」は33体。地味で素朴な「原点回帰」的な作品が多いという。 「つくりもん」が飾られたテントは、福岡町の広い範囲に点在している。アンパンマンやゲゲゲの鬼太郎などのアニメキャラを模したものや、坂本龍馬や大伴家持などの歴史上の人物などをテーマにした作品が多い。出来がいいものもあれば、いまいちなものもある。一等に選ばれると賞金がもらえるということもあって、それぞれに趣向を凝らした作品になっている。 これとよく似たお祭りを、まったく別の場所で見た記憶があった。 あれは一体どこだったっけ。 しばらくあれこれと考えた末に、ようやく思い出した。そうだ、東ティモールだ。 東ティモールはキリスト教の国なので、毎年のクリスマスは国を挙げて盛大に祝う。その一環として開かれているのが「全国馬小屋コンテスト」だった。「馬小屋」とはイエス・キリストが生まれた場所。東ティモールでは村ごとに小さな馬小屋のレプリカを作り、その中に聖母マリアとキリストの像を置いて、キリストの生誕を祝うのである。 ある村の馬小屋には芝生がきれいに敷き詰められていた。別の村の馬小屋は赤や黄色の電飾で飾り付けられていた。スピーカーとアンプを置いてレゲエ音楽を流している馬小屋もあった。 村の若者が馬小屋作りに熱心なのは、国で一番優れた馬小屋を作った村には政府から豪華賞品が贈られるからだという。 「つくりもんまつり」も「馬小屋コンテスト」も、もともと宗教的な行事として始まったイベントが、作品それ自体の出来映えを競うように変質したという同じような経緯を辿っている。何かを作れば優劣を競いたくなるし、次回はもっといいものを作ってやろうと考える。そういう人間の性質は世界中どこでも同じなのだろう。 【これが東ティモールの「馬小屋」。サンタの表情が怖いですね】 富山県ではほとんどの田んぼがすでに刈り取りを終えていた。 農家の庭先で脱穀した後の籾殻を袋に詰めているご夫婦がいた。脱穀機にかけた後の「かす」をトラックに積んで、収穫が終わった後の田んぼにまくのだという。土の養分になるのだ。 「今年は暑かったから、あまり米の出来は良くなかったよ」と奥さんはため息混じりに言う。「例年の85%ぐらいかねぇ。野菜も暑さにやられてダメだったしねぇ」 北海道や東北では、猛暑のおかげで米が例年になく豊作だと聞いていたが、北陸まで下ると暑さが稲へのダメージになってしまったようだ。暑すぎてもダメ、寒すぎてもダメ。自然を相手にした農業の難しいところだ。 峠をひとつ越えて石川県に入る。 金沢は「小京都」と言われるだけあって、古い街並みが残っているところが多かった。長町の武家屋敷の土塀などは丁寧に保存されていて美しい。けれども先を急がなければいけなかったので、ほんの少し見回っただけで、兼六園にも寄らずに金沢市を後にした。まぁいい。いつかまた来ることがあるだろう。 国道8号線を南下して、小松市に向かう。 特にこれといった特徴のない町だが、ここには「松井秀喜ベースボールミュージアム」なるものがある。松井選手の故郷なのだ。 まだ現役で活躍中なのに、博物館が建っているというのはすごい。僕は松井選手と同い年なんだけど、高校生の頃から彼が同級生だとは思えなかった。抜群の運動能力も、落ち着き払った態度も、頭の大きさも、全てが「超高校級」だった。 *********************************************** 本日の走行距離:76.3km (総計:6109.4km) 本日の「5円タクシー」の収益:10円 (総計:71680円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-09-27 07:03
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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