昨日はリキシャが故障したせいで目標としていた奈良には辿り着けず、京田辺市までしか行くことができなかった。今日は再び奈良を目指し、さらに大阪まで行くことにする。
問題なのはやはりリキシャの状態だ。昨日、一応の応急処置は施したが、それがどのぐらい持ってくれるかは全くの未知数なのだ。ここ最近、ずっとリキシャに何か起こりはしないかとビクビクしながら走っている。 案の定、走り始めて10キロほど行ったところで、後輪の車軸から「ギギギ」という異音が鳴り始めた。急にペダルも重くなった。マズい。何かが引っかかっているようだ。 急いでリキシャを降りて点検してみたところ、昨日締め付けたナットには問題がなかった。そもそもナットの緩みであんな音はしない。それじゃどこがおかしいのか。 容疑者は右側のベアリングだ。前々からここが痛んでいるのは知っていたのだが、それがついに壊れて悲鳴を上げたのだろうか。でもベアリング交換となると、とても僕一人の手には負えないし、おそらく日本で同じ部品を調達するのは(例によって)かなり難しいだろう。この場で何とかできないものか。 僕はほとんどやぶれかぶれで、ベアリングを内側から押さえている金具のネジをゆるめてみた。この金具がベアリングと擦れて音を出しているような気がしたからだ。 するとどうだろう。もう音がしなくなったのである。ペダルも軽い。直ってしまったようだ。これには自分でも驚いてしまった。 もちろん本来は固定するべき部品のネジをゆるめているわけだから、その後どこか別の部分に悪影響が出る可能性は十分にある。というか間違いなく出るだろう。これは「とにかくゴールまで持ってくれればいい」という応急処置である。 【精華町で出会った88歳のおばあさん。「歯はあらかた抜けてしもたけど、口が達者だから元気なんや」とおっしゃっていた】 そんなこんなでスタートから躓いてしまった。気を取り直して奈良に向かう。 精華町から丘をひとつ越えると平城宮跡に出た。かつて都が置かれていた場所の遺跡や、資料館などが集まる歴史文化地区だ。今年は平城遷都1300年なので、ここでもそれを記念したイベントが開かれているらしく、おおぜいの観光客で賑わっていた。 奈良市をまっすぐ南に進み、大和郡山市から斑鳩町、法隆寺の横を通り抜けて、大和川沿いを西に進み、大阪府柏原市に入った。 大阪府に入ると町工場が目立つようになる。国道沿いには金属加工や溶接といったマッチョ系の工場が立ち並んでいる。当然、製品や原料を運ぶために大型トラックがひっきりなしに出入りしているのだが、道幅は狭く、交通量も多いので、渋滞が常態化している。リキシャもすごく走りにくかった。 奈良の人も大阪の人も気さくで、しょっちゅう声を掛けられた。特に多いのは下校途中の学生たち。3,4人の女子中学生とすれ違おうものならもう大騒ぎで、みんなして写メを撮ろうと携帯を構えるのだった。 「うわ、めっちゃすごいやん。これで日本一周やって。がんばってぇー」 コンビニでオレンジジュースを買って出てきたときに、小学校高学年ぐらいの男の子がたまたま通りかかったのだが、その反応が面白かった。 「あのー、英語話せますか?」 唐突にそう聞くのである。僕を外国人だと勘違いしているのだろうか? 「いや、僕は日本人だけど。一応、英語は話せるよ」 「それじゃブラジル語は?」 「ブ、ブラジル語? それ、ポルトガル語の間違いじゃない?」 「僕は大阪人です。大阪弁話せます」 「あ、そう」 どうも話の展開が読めない子である。マイペースというか、人の話を聞いていないというか。 「あのー、もし英語話せるんやったら、『セブンイレブン』って英語で言ってみてください」 「セブンイレブンは英語だと思うけど」 「だからー、『セブンイレブン』って英語で言ってぇな」 この子は相当にしつこく『セブンイレブン』と言い続けていた。日本人にセブンイレブンと発音させて一体どうしようというのか。正解がわからない問いかけであった。どうせぇいうねんな。 大阪では普通の人々の会話が漫才みたい聞こえる、なんて話を東京の人から聞くことがあるが、確かに大阪人は独特の間というか会話のテンポを持っていると思う。この子にも大阪人の血がしっかりと流れているのだろう。 柏原市から藤井寺市を抜けて堺市に入ったところでタイムアップ。日没になったので、本日はここまでにする。 まだ和歌山まではかなりの距離を残しているが、何とか明日中にたどり着きたい。 *********************************************** 本日の走行距離:54.4km (総計:6420.7km) 本日の「5円タクシー」の収益:15円 (総計:73650円) ***********************************************
by butterfly-life
| 2010-10-01 06:54
| リキシャで日本一周
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■ 新しいブログへ ■ 三井昌志プロフィール 写真家。1974年京都市生まれ。東京都在住。 機械メーカーで働いた後、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。 帰国後ホームページ「たびそら」を立ち上げ、大きな反響を得る。以降、アジアを中心に旅を続けながら、人々のありのままの表情を写真に撮り続けている。 出版した著作は8冊。旅した国は39ヶ国。 ■ 三井昌志の著作 「渋イケメンの国」 本物の男がここにいる。アジアに生きる渋くてカッコいい男たちを集めた異色の写真集です。 (2015/12 雷鳥社) カテゴリ
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