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150日目:日本一周達成の時(徳島県徳島市→東京港)
 昨日に続いて快晴の朝を迎えた。
 旅の後半は雨降りの日やリキシャの故障が相次ぎ、どちらかと言えば苦しいことの方が多かったが、最後の青空は旅の神様が用意してくれたご褒美なのだろう。

 鳴門市の宮崎さんのお宅からフェリー乗り場のある津田港までは20キロあまりの道のり。2時間もあれば行ける。ひと漕ぎひと漕ぎをかみしめるように進む。


【港を走るリキシャ。雪本さん撮影】

 予定よりも10分遅れの9時40分に津田港に入った。港の長い直線道路をしばらく進むと、ずっと先でこちらに手を振っている人たちが見えた。ゴールの瞬間に立ち会うために駆けつけてくれたのだ。
 みんな満面の笑みだ。僕も自然と笑顔になる。
 手を振る。振り返す。
「おめでとう 日本一周 リキシャの旅」の横断幕が見える。誰かが書いてくれたのだ。

 ゴール。
 集まってくれた11人が一斉にクラッカーを鳴らす。パーン! パパーン!
 おめでとう。
 ありがとう。
 みんながそれぞれの手に持ったカメラを向ける。僕はちょっと照れながら、芸能人の婚約会見のようにそれぞれのカメラに順繰りに笑顔を向ける。



 正直言って、徳島の地でこんなにたくさんの人々からゴールを祝ってもらえるとは思っていなかった。みんなリキシャの旅を始めるまでは顔も知らなかった人たちばかりなのだ。
 東みよし町でカフェを開いている秋元さん、「多発性硬化症」という難病に冒されながら色鉛筆で絵を描き続けている画家の川上さんと奥さん、リキシャに会うために大阪から北海道までバイクを飛ばした無謀な若者・雪本さん、そして二度にわたってお宅に泊めていただいた宮崎さん・・・。舞台のカーテンコールを見ているような気持ちだった。この旅を彩ってくれたキャストが、幕が下りたあとにもう一度舞台の上に集合して、手を振ってくれている。



 徳島は僕にとって縁もゆかりもない土地だった。東京からフェリーが出ているというただそれだけの理由で、この地をスタート地点に決めただけだ。それなのに、最後にはこれだけ多くの人が旅の終わりを見届けるために集まってくれた。日本一周の達成を一緒に喜んでくれた。
「リキシャは人と人を繋げる道具だ」
 旅を始めるとき、僕はそう書いた。でもそれは単なる予感に過ぎなかった。確信は何もなかった。
 150日の旅が終わって、その予感がこうして現実になって目の前に現れたとき、今までに味わったことのない喜びが湧き上がってきた。



 フェリーが出港したのは11時半。
 乗船タラップが外され、貨物室のゲートが閉じられ、汽笛が鳴る。船はゆっくりと、本当にゆっくりと港を離れていく。
 乗船口の前で集まったみんなが手を振ってくれる。飛び跳ねている人もいる。僕も大きく手を振る。フェリーは長い時間かけて90度の方向転換を行ってから、徐々にスピードを上げて港を出る。
 手を振る人たちの姿がどんどん小さくなっていく。豆粒以下だ。でもまだ手を振っているのが見える。だから僕も手を振り続ける。腕が疲れるほど手を振り続ける。

 さようなら徳島。
 さようなら温かい人たちの笑顔。


 ※ 見送ってくださった宮崎さんが撮影した動画。フェリー出航の様子が見られます。

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本日の走行距離:22.1km (総計:6543.3km)
本日の「5円タクシー」の収益:2065円 (総計:76670円)

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by butterfly-life | 2010-10-05 11:44 | リキシャで日本一周


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