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ブログを移転しました
ホームページ「たびそら」の大幅リニューアルに伴い、ブログを移転しました。

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http://tabisora.com/blog/
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今後ともよろしくお願いします。



# by butterfly-life | 2016-08-25 00:57 | その他
151日目:ゴール!(東京・山手線一周)
 徳島発・東京行きのフェリーは往路で乗ったものと同じ船体だった。二段ベッドの二等寝台。オフシーズンのわりにはバイク旅行者を中心にけっこうお客さんがいたのが意外だった。隣のベッドにも原付で四国や中国地方を回ってきたという若者がいた。
 このフェリーの最大の売りは展望風呂で、なみなみとお湯が張られた大浴場の窓からオーシャンビューが一望にできるという趣向だ。もちろん温泉ではないが、眺めの良さはそんじょそこらの温泉リゾートが束になってもかなわない。

 紀伊半島を抜けてからしばらくは波が高く、船がかなり揺れて気分が悪くなったので、午後はベッドの上で寝て過ごした。船の揺れというのは起きている分には迷惑なものだが、横になっているとハンモックと同じで要領で案外気持ちよく眠れるようだ。電池が切れたように爆睡することができた。

 東京有明港に接岸したのは翌朝6時20分。
 曇りときどき雨という予報が出ていたが、それを見事に裏切る快晴の朝だ。旅の最後でなんとか「雨男」の汚名を返上できるかもしれない。終わりよければすべてよし、になるだろうか。
 有明埠頭周辺は東京ビッグサイトやフジテレビ社屋などの近代的で生活感のないソリッドな建築物が並んでいる。片側三車線から四車線もある広い直線道路には車の姿はほとんどなく、そこを派手なリキシャがゆるゆると走る光景はかなり奇妙だった。


【フジテレビ前にて】

 豊洲から築地、銀座、日比谷を通って東京駅へ。ここからリキシャ最後の旅「山手線一周の旅」がスタートする。
 最初から自転車で伴走してくれたのは二人。渋谷のスターバックスで働く恩田さんと、わざわざ平塚から輪行してきてくださったキヨコさん。まずは東京駅からまっすぐ南に下って浜松町、品川方面を目指す。
 日曜の朝の東京は交通量が少なくて走りやすかった。本格的なロードバイクに乗ってツーリングを楽しむ自転車集団が次々とリキシャを追い抜いていく。秋晴れの日、サイクリング日和だ。


【渋谷スクランブル交差点をリキシャが走る】

 渋谷のハチ公前で記念撮影を撮る。まだ昼前なので人で埋め尽くされている感じではなかったので、ハチ公銅像の横にリキシャを置くのは簡単だった。待ち合わせをしている女子高校生も、観光に来ている欧米人も物珍しそうにリキシャとハチ公のツーショットを撮っていた。
 渋谷から新宿の都庁に向かう。都庁前の待っていた人たちと合流して、総勢10人ほどでゴールを目指す。



 池袋、駒込、日暮里と進み、上野公園でさらに4人が合流する。
 秋葉原はものすごい人出だった。さすがはAKBで盛り上がるオタクの聖地である。
 秋葉原からまっすぐ東に進んで、あとはゴールの錦糸町を目指すのみ。
 空はまだ晴天を保っている。予報を裏切ってお天道様がリキシャのゴールをお祝いしてくれているようだ。
 今日の走行距離は60キロを超えたが、疲れは全く感じない。東京はそれなりにアップダウンがあるし、気温も上がって汗をかいたが、体がすっかりリキシャ引き仕様になっているのである。5ヶ月の経験は伊達ではなかった。



 新大橋通に入ると、ゴールの猿江恩賜公園はもう目の前だ。
 腰を浮かして最後のスパート。立ち漕ぎでスピードを上げる。
 やがて公園の入り口が見えてくる。たくさんの人が手を振っている。リキシャが近づくと歓声と拍手が起こった。
 10月4日午後3時15分、ゴール。
 151日に及んだリキシャの旅は、ここでようやく終わった。


【ゴールへ向かうリキシャ。池田さん撮影】



 ゴールしてからは休む暇もなく「5円タクシー」の最後の営業を行った。集まってくれた方を一人ずつ乗せて公園内をひと回りする。「意外と乗り心地がいいんですね」という感想が多かった。
 自分でリキシャを漕いでみたいという人もいたので、漕いでもらうことにした。リキシャのペダルの重さに驚きの声を上げる人や、ハンドリングの感覚の違いに戸惑う人もいる中で、元競輪選手の富田さんは動きだしの重さをもろともせずスムーズにリキシャを走らせていた。さすがは29年現役を続けてきた足である。特にふくらはぎの筋肉の盛り上がりはすごかった。


【最後の「5円タクシー」営業。とても喜んでいただけました。Kecyさん撮影】


【最後は僕もリキシャの乗客に。いやー楽でいいですね。Kecyさん撮影】


【6600キロの激走に耐えたリキシャ。これでお役ご免である】

 総走行距離が6600キロに達したリキシャはもうボロボロだった。一見しただけではさほど問題があるようには見えないのだが、実際には駆動系を中心にいつ壊れてもおかしくない状態なのだ。特に最後の一週間は「本当にゴールまでたどり着けるのか?」とはらはらしっぱなしだった。
 でも、なんとか最後まで走り抜いてくれた。

 ご苦労さん。
 これでおまえもゆっくり休めるな。
 最後にそう声をかけてやった。


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本日の走行距離:65.8km (総計:6609.1km)
本日の「5円タクシー」の収益:4595円 (総計:81265円)

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# by butterfly-life | 2010-10-06 13:14 | リキシャで日本一周
150日目:日本一周達成の時(徳島県徳島市→東京港)
 昨日に続いて快晴の朝を迎えた。
 旅の後半は雨降りの日やリキシャの故障が相次ぎ、どちらかと言えば苦しいことの方が多かったが、最後の青空は旅の神様が用意してくれたご褒美なのだろう。

 鳴門市の宮崎さんのお宅からフェリー乗り場のある津田港までは20キロあまりの道のり。2時間もあれば行ける。ひと漕ぎひと漕ぎをかみしめるように進む。


【港を走るリキシャ。雪本さん撮影】

 予定よりも10分遅れの9時40分に津田港に入った。港の長い直線道路をしばらく進むと、ずっと先でこちらに手を振っている人たちが見えた。ゴールの瞬間に立ち会うために駆けつけてくれたのだ。
 みんな満面の笑みだ。僕も自然と笑顔になる。
 手を振る。振り返す。
「おめでとう 日本一周 リキシャの旅」の横断幕が見える。誰かが書いてくれたのだ。

 ゴール。
 集まってくれた11人が一斉にクラッカーを鳴らす。パーン! パパーン!
 おめでとう。
 ありがとう。
 みんながそれぞれの手に持ったカメラを向ける。僕はちょっと照れながら、芸能人の婚約会見のようにそれぞれのカメラに順繰りに笑顔を向ける。



 正直言って、徳島の地でこんなにたくさんの人々からゴールを祝ってもらえるとは思っていなかった。みんなリキシャの旅を始めるまでは顔も知らなかった人たちばかりなのだ。
 東みよし町でカフェを開いている秋元さん、「多発性硬化症」という難病に冒されながら色鉛筆で絵を描き続けている画家の川上さんと奥さん、リキシャに会うために大阪から北海道までバイクを飛ばした無謀な若者・雪本さん、そして二度にわたってお宅に泊めていただいた宮崎さん・・・。舞台のカーテンコールを見ているような気持ちだった。この旅を彩ってくれたキャストが、幕が下りたあとにもう一度舞台の上に集合して、手を振ってくれている。



 徳島は僕にとって縁もゆかりもない土地だった。東京からフェリーが出ているというただそれだけの理由で、この地をスタート地点に決めただけだ。それなのに、最後にはこれだけ多くの人が旅の終わりを見届けるために集まってくれた。日本一周の達成を一緒に喜んでくれた。
「リキシャは人と人を繋げる道具だ」
 旅を始めるとき、僕はそう書いた。でもそれは単なる予感に過ぎなかった。確信は何もなかった。
 150日の旅が終わって、その予感がこうして現実になって目の前に現れたとき、今までに味わったことのない喜びが湧き上がってきた。



 フェリーが出港したのは11時半。
 乗船タラップが外され、貨物室のゲートが閉じられ、汽笛が鳴る。船はゆっくりと、本当にゆっくりと港を離れていく。
 乗船口の前で集まったみんなが手を振ってくれる。飛び跳ねている人もいる。僕も大きく手を振る。フェリーは長い時間かけて90度の方向転換を行ってから、徐々にスピードを上げて港を出る。
 手を振る人たちの姿がどんどん小さくなっていく。豆粒以下だ。でもまだ手を振っているのが見える。だから僕も手を振り続ける。腕が疲れるほど手を振り続ける。

 さようなら徳島。
 さようなら温かい人たちの笑顔。


 ※ 見送ってくださった宮崎さんが撮影した動画。フェリー出航の様子が見られます。

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本日の走行距離:22.1km (総計:6543.3km)
本日の「5円タクシー」の収益:2065円 (総計:76670円)

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# by butterfly-life | 2010-10-05 11:44 | リキシャで日本一周